08
2013

”時間帯”を表現するために

綺麗な被写体があるから写真を撮ることもあれば、そうでないときもあります。そうでないときの方が多いです。

shakuyaku
Nikon D800/Nikkor 16-35mm F4G ED VR


これを見て朝に撮影したものだと思っていただけたのなら、この写真は成功です。植物のみずみずしさと、低い位置から射す色温度の低い光は、いかにも朝らしい要素です。


実際に朝に撮影しました。土曜日なのに仕事に行かなければならなかったので憂鬱な気分でしたし、加えてこの場所は建物の陰になっていて、朝日は射し込みません。最悪です。

日陰は柔らかい影をつけてくれますが、それだけでは時間帯を伝えることはできません。このとき必要だったのは優しい陰影ではなく、少しメリハリの効いたハードなライトです。本来ならその役目は朝日が果たしてくれるはずですが、それは叶いません。仕方ないのでスピードライトを使います。


アンバーのジェルを付けたスピードライトは、朝日か夕日になります。高くない位置から光らせることで、太陽が昇っていなくても、曇りの日でも、マジックアワーの太陽光を用意することができます。
今回は水滴と、背景が明るいことが”朝らしさ”の演出に繋がりました。



こちらは、まるで夕方に撮影された写真のようです。もちろん夕方に撮影しました。

shovel
Nikon D800/Nikkor 16-35mm F4G ED VR


私が気にしているのは、その時間帯に見合った写真を撮ることがいかに難しいか、ということです。撮影日時や時間帯を説明しなくても、それがいつなのかを伝えることのできる写真は想像以上に難しいものです。

ng_shovel


例えば同じ場所で撮影した写真があります。最高につまらない写真で、何の物語性も感じません。時間帯も分かりません。影のないとてもソフトな写真で、写っているのがスコップではなくて少女だったら、まだよかったかもしれません。
ですが、ここにあるのは薄汚いスコップです。薄汚いスコップを主役にするのが私たちの使命です。

使い古されたスコップ、低い色温度の光、長い影、重厚な雲、暗くなっていく町…。ひと仕事終えた気分を味わえます。この薄汚い主役に親近感が湧いてきたのなら、この写真は成功です。主役は綺麗である必要はありません。何かを語ることができれば、それが主役です。

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