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2016

【レビュー】SUMMICRON-M F2/50mm

CATEGORYレンズ

M型ライカの歴史は、ズミクロン 50mmと共にあったと言っても過言ではありません。1999年から続く現行モデルの50mmは第4世代。フィルム機のM6TTLから始まり、M7、MP、そしてデジタルのM8、M9、M Monochrome 、Leica Mと、数々のM型と同じ時代を生きてきました。

 



〇歴史

ライカレンズに詳しい人なら、このレンズの光学設計が1979年に登場した1世代前のモデルと同じであることを知っているかもしれません。35年以上も同じレンズを採用し続けるのは横着しているようにも思えますが、たとえ本当に良いものであっても容易に消えていってしまう大量生産・大量消費社会において、非常に希有な存在である…とでも言っておきましょう。


とはいえ、同焦点距離のズミルックスは1961年から2004年までの43年間、鏡筒デザインを変えながらも同じ光学系を採用し続けていた"先輩"なので、”ロングセラー”をこのレンズの特徴とするには幾らか年期が足りません。



第3世代からの大きな変更点は、組込式レンズフードと全周ローレット加工のフォーカスリングです。フォーカスタブがなくなったのは、コストカットが大きな目的だと思われますが、組込式フードと併せて、望遠側のレンズの特徴を採用している、とも捉えられます。


SUM2:50hood 

フード伸縮による全長変化イメージ



この記事の作例はクリックすることで少し大きい画像を見ることが可能です。Exif情報も、クリックして表示される画像で見ることが出来ますので、ぜひPC画面にてご覧ください。



○近接撮影

最短撮影距離は0.7mで、撮像範囲は277mm x 416mmです。実際の焦点距離は※52.2mmで、これは現行のズミルックスやAPO-ズミクロンよりも少し長くなっています。


※データシートには53.2mmと表記されていますが、レンズの距離指標には”22”と刻印されているため、この記事では52.2mmとします。


L1000258_blog_rev__1440p.jpg Leica M-E/ISO160, 1/180, f/2


フォーカシングは全群繰り出し式のため、近接側では収差が拡大することになります。

2~3m辺りを境にして高周波の解像度が変わり、無限遠側でより解像するようになる印象がありますが、f/4まで絞れば、撮影距離による画質の低下はほとんど気にならなくなります。



○コマ収差

コマ収差は、点光源が尾を引くように写る収差です。特に、鳥が羽を広げたように写るサジタルコマフレアは、夜景や星の撮影で目立つため、この収差が開放から良く補正されたレンズを求める人も多いです。


L1001224_blog_rev_1440.jpg

Leica M-E/ISO640, 1/60, f/2


L1001224_blog__1080_1_blog_rev_1440.jpg


写真の左下を切り出してみましたが、サジタルコマフレアが少ないことがわかります。



○ボケ

アウトフォーカス部分の写り方が、人生を狂わせてしまうことがあります。


ズミクロンは、まず間違いなく、シャープさが特徴のレンズです。周辺までよく解像し、f/4ほどで中央と四隅の落差がかなり縮まります。これは大口径レンズとは異なる性質で、どちらかと言えばマクロレンズに似ています。


L1000281_blog_rev__1440p.jpg 

Leica M-E/ISO160, 1/3000, f/2


L1001322_blog_rev__1440p.jpg

Leica M-E/ISO500, 1/45, f/2


ボケの話をする際に、”マクロレンズに似ている”などと言われて、すでに絶望を感じている人もいるかもしれません。


傾向としては、後ボケは多くの場合で硬く、二線ボケも発生しやすいです。焦点距離が長いためか、非球面ズミクロン35mmよりはマシに思えますが、似たボケ方をしています。


一方で、前ボケは柔らかく写ります。また、ピント部分からアウトフォーカスへの繋がり方は、前後ともになだらかで、写り方に不自然さはありません。



○遠景

全群繰出し式のレンズは、近接側で収差が拡大してしまいます。

逆に言えば、遠景撮影において最も収差が抑えられ、持っている光学性能が最大限発揮されるはずです。


L1000177_blog_rev__1440p.jpg Leica M-E/ISO160, 1/4000, f/2


前ボケを意識しての遠景撮影。

開放では、明るい場所でも周辺光量落ちが目立ちます。


L1000591_blog_rev__1440p.jpg

 Leica M-E/ISO400, 1/25, f/4


L1000568_pp_blog_rev_1440.jpg

 Leica M-E/ISO200, 1/1000, f/5.6


f/4とf/5.6とで、解像度にはほとんど違いはありません。シャッター速度と、被写界深度、それと僅かな周辺光量の違いで、どちらの絞りを選択するか、になってくるでしょう。


遠景撮影に関しては、M-Eのセンサーに不満が出るくらいのポテンシャルがあると感じます。

なるほど、ライカが非球面レンズとアポクロマート補正、フローティングエレメントの三点盛りで、価格を4倍にしたモデルを作らざるを得なかった理由が分かります。



○人物

M型を使う人は、多かれ少なかれ、人物撮影に関心と拘りがあることでしょう。そのため、Mレンズを知る上で、人物がどう写るかに言及することは必須のように思えます。


このレンズが、絞った方が良い結果になるのは既に分かっていたのですが、兎にも角にも開放で撮影したくなるときもあります。Elmar-M やSummarit-M よりもボカせる可能性があるのですから、理性など放っておいて、本能の赴くままに絞りを開きます。


L1000983_blog_rev__1440p.jpg 

Leica M-E/ISO640, 1/60, f/2


シャープなレンズを女性ポートレートに使うことを、シャブリを生牡蠣に合わせることのようにタブー視する人もいます。

そうでなくても、撮られた人が、”写りすぎていてこわい”などと感想を漏らすようなレンズは、取扱注意のシールを貼っておいた方が良いのかもしれません。


とはいえ、先述したように全群繰出し式のレンズ故に、近接側では収差が増大し、とりわけ開放時にはシャープネスが低下します。

ライトが当たった肌などは、球面収差によって僅かにソフトな写り方をするので、生牡蠣の人も絶望せずに済むかもしれません。


L1000955_blog_rev__1440p.jpg 

Leica M-E/ISO640, 1/90, f/2


50mm F2というスペックに華やかさなど微塵も感じられませんが、何の躊躇もなく、この撮影距離で人物を撮れるのは、大きなアドバンテージです。


縦位置撮影の場合、どうしても顔の位置が中央から離れてしまうため、周辺解像度が高いレンズの方が結果が良く見えます。横撮影はズミルックス、縦撮影はズミクロン、というような使い分けも一興かもしれません。



そんな妄想に現を抜かしながら、以下、作例になります。



L1000432_blog_rev__1440p.jpg 

Leica M-E/ISO160, 1/350, f/2


L1001369_blog_rev__1440p.jpg

Leica M-E/ISO2500, 1/1000, f/2


L1001389_blog_rev__1440p.jpg

Leica M-E/ISO1600, 1/90, f/2


L1001331_blog_rev__1440p.jpg

Leica M-E/ISO500, 1/90, f/2


L1000016_blog_rev_1440.jpg

Leica M-E/ISO640, 1/750, f/5.6


 L1000305_blog_rev__1440p.jpg

Leica M-E/ISO160, 1/4000, f/2


L1001007_blog_rev_1440.jpg

Leica M-E/ISO640, 1/90, f/2


最後までご覧いただき、ありがとうございました。



(2017.2.8:加筆修正)

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Tag:Leica 標準 レビュー M-E ポートレート スナップ

2 Comments

ぜいぜい  

とてもわかり易い解説ありがとうございます。(だが買えない)
風景撮りの者には垂涎のレンズかなと思います(だが買えない)
2枚目の画像がどうしてそう写るのかFC2も技術があがったのか。。。
残念ながらExif情報見られませんでした。

2016/11/25 (Fri) 09:30 | EDIT | REPLY |   

しゃるる  

Re: ぜいぜいさん

> 風景撮りの者には垂涎のレンズかなと思います(だが買えない)

フィルター径39mmの小型レンズですので、登山への持ち出しも容易ですね。

> 2枚目の画像がどうしてそう写るのかFC2も技術があがったのか。。。
> 残念ながらExif情報見られませんでした。

gif(ジフ)形式の画像は、言うなればデジタル版パラパラ漫画です。
これは作例ではないので、Exif情報はありません。
それ以外の作例の撮影データは、基本的なものは画像の下に記したものを
参考にしてください。

2016/11/25 (Fri) 21:18 | EDIT | REPLY |   

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